歴史ファイル

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【怠け者の幕末・明治の日本人】 働きたくないでござる!外国人が見た真の日本人の姿

現代の東京の街を歩いていると人々の歩く速度がとても速い。かくいう私も歩くスピードはかなり速いほうで通勤時だけでなく、休日の際にも友人からもっとゆっくり歩いてくれと言われることがしばしばある。

日本人はいつもせかせかしてせっかちで仕事などもテキパキこなす、そんなイメージはないだろうか。 今でこそブラック企業などの社会問題で働き方が変わってきているが、一昔前のテレビのCMでは「24時間戦えますか!?♬」なんて平気で流れていたものである。

また、江戸時代の日本人は寺子屋などが多く、子供の頃から勉強に励み識字率が高く勤勉なイメージが定着している。映画やドラマのサムライや忍者なども日本人像を作るのに大きく影響がある。

幕末から明治。開国後の日本には多くの外国人が滞在し、その当時の日本人の様子を記している。 そこには私たちがイメージしている日本人とは少し違った日本人が浮かび上がってくる。

タバコ好き、お茶好き、おしゃべり大好き、悠長な日本人

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ルドルフ・リンダウというドイツからの外交官がいた。 1859年に(安政6年)、スイス通商使節団の先遣隊としてスイス通商調査派遣隊の隊長として来日。 安政6年の政治的な出来事は安政の大獄などが行われていた時期で、リンダウは幕末の動乱の初期あたりから北は箱館、南は長崎まで日本人を見聞していた。 リンダウは日本人について以下のように述べている。

「日本人は大変なお茶好きで、タバコ好きで、お喋りである。絶えずお湯が必要で昼も夜も炭火が焚かれてなければならない」

「何もすることのない、何もしてない人々、その数は日本ではかなり多いのだが、そんな人たちは、火鉢の周りにうずくまってお茶を飲み、キセルを吸い、話をしたり聞いたりしながら、長い時間を過ごすのである」

「彼らの多くはまだ東洋に住んだことのないヨーロッパ人には考えもつかないほどに無精者である」

意外なことに、当時の日本人を怠け者であると評価している。 私はこのような内容を知った際は、かなり驚いた。初めに書いたように日本人は働き者でスピード感がある生活を送っていたのではと思っていたからだ。

タバコをもっと吸わせろ、お茶をもっと飲ませろ、もっと一休みさせろ、悠長な日本人

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ウィリアム・グリフィスはアメリカ出身で、1871年明治4年福井藩のお雇い外国人として赴任した。 江戸から福井への赴任の途中、京都・伏見で出迎えの福井藩士5名と落ち合い、彼らと旅を共にした。 そこでグリフィスは以下のように述べている。

「目的地に着くずっと前から、日本人のやり方はアメリカと違うということ、また日本の生活はニューヨークの秒刻みの生活とは全く違うということに気が付いた。 日本では集団が腹の立つほどゆっくり動く。十人の武士の旅というと、やたらと眠り、タバコはふかす、茶は飲む、ぶらぶら時を過ごしている」

「役人はもう少し茶をくれ、もう少しタバコを吸わせろ、あぐらをかいてもう一休みさせろと叫ぶ。最初はそれは見るに堪えない、気が狂っているようで怖かった。 日本では時は金ではなく、二束三文の値打ちもないものだった」

「我々が一日半で終わらせる仕事を、日本人は同じ仕事を3日かかった」

調べていくうちに、当時の日本人をイメージすると何やらだんだんほわっとした雰囲気になり、微笑ましい気分になってくる。 幕末の世は「泰平の眠りを覚ます上喜撰 たった四はいで夜も寝られず」の日本史上最大の危機から、明治近代が始まるまさに動乱の時期。 私たちが思うより当時の日本人は危機感が欠如していたのだろうか。

のんびりやりましょ 悠長な日本人

フランス人の作家、アンドレ・ベルソールは1897年から約8か月日本に滞在した。 彼も北は北海道、南は長崎・鹿児島まで幅広く各地を旅行している。 アンドレの著書「日本の昼と夜」で、大牟田の炭坑に立ち寄り見学したときの印象を以下のように述べている。

「ここの炭坑労働者たちは、工場の労働者と同じように怠惰で無頓着である。日本の労働者は、ほとんどのいたるところで、動作がのろくダラダラしている」

1895年に終わった日清戦争からわずか2年たらず、その後は日露戦争が控えている。 要するに日本は明治維新後、列強に近づくべく富国強兵、殖産興業政策真っただ中なのだ。 そんな中、日本の労働者はまったく我関せずといったところだろうか。

スローライフ

効率やスピードを重視するのではなく、のんびりと過ごしながら、人生を楽しみ、生活の質を高めようとすること。 ――デジタル大辞典より――

150年前、日本人はすでにスローライフという生活スタイルを持っていた。 それが壊れたのは列強に負けまいとやみくもに進み続けた結果なのかもしれない。

幕末・明治維新から大正昭和平成と何かに駆られたように働きづくめだった日本人。 令和はのんびり過ごしたいものです。 f:id:Katemato:20190806223440p:plain