歴史ファイル

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【世界を救う妖怪アマビエ】 疫病退散 終息祈願 

2019年12月に中国の武漢で『新型コロナウイルス(COVID-19)』の感染が発見されるやいなやわずか2か月間で、世界中で感染者10万人以上、死者4000も感染する大惨事となっている。3月11日にWHOがパンデミックであることを表明し、終息の兆しが見えない。

日本の24000円あった日経平均株価は大暴落し、18000円を切る寸前まで来ている。 30年前にバブルが弾けて以来、日本は『失われた30年』なんて言われた時代を私たちは過ごしてきたが、やっと上向いてきたと思われた経済へのダメージは計り知れない。

そんな中、最近TwitterやFacebokなどのSNSで話題になっているものがある。

『魚人妖怪・アマビエ』

アマビエは日本の妖怪で、半人半魚だといわれている。 f:id:Katemato:20200312231335j:plain

今から約170年前、ペリーの乗る『黒船』が来航する数年前の『幕末前夜』 1846年4月江戸時代、肥後国(熊本県)。

海辺の漁村で海中に光る物があると噂になった。村人は役所にそのことを通報し、その謎の発行体を確認しようと村の役人が漁師と共に現場へ赴いた。

彼らは砂浜から発行体をしばらく見つめて、なんだろうと話し合っていた。 すると、発行体は海中から陸のほうへゆっくり近づいてきて、海面から『魚人』が現れた。

魚人は長い髪を持ち、口にはくちばしのようなものがあり、首から下はウロコに覆われている。そして下半身は魚の尾のようにはなっておらず、三本の足があった。

驚いて腰を抜かしている役人や漁師に対し、魚人は「我は海中に住みし、『アマビエ』なり」と名乗った。 さらに続けて「この先6年間は豊作が続くが、疫病が流行することがあれば、私の姿を描いた絵を人々に早々に見せよ。」と言った。 役人たちは返す言葉もなく立ち尽くしていると、魚人・アマビエは再び海中へと帰っていった。

この出来事は人から人へと話が広がり、さらに瓦版(現代でいう新聞)によって多くの人が知ることになった。瓦版には絵師によってアマビエの特徴的な姿が描かれていた。 人々はこの絵を疫病退散の御利益があるとしてアマビエの刷り物が流行した。

アマビエのはどこからきたのか

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◇海彦(アマビコ)

1844年、越後に『海彦(アマビコ)』という妖怪が出現した。当時の瓦版にはアマビコの容姿が描かれていた。それはアマビエと類似していて、頭から3本の足が胴体がない状態で生えていて、人間のような耳をし、真は丸く、口が突出していたという。海彦は日本の人口7割の死滅と救済を予言して姿を消したといわれている。

◇尼彦(アマビコ)

尼彦はアマビエとは容姿が全く違う。江戸時代、肥後国に現れた尼彦は、サルのような容姿をしていて、毎晩サルの鳴きまねをしていた。ウワサを聞いた柴田彦左衛門という人物は現場に行ったところ尼彦に遭遇した。身体は毛におおわれていて、猿に似た三本足だったといわれる。 アマビエと同じく、尼彦は「われは海中に住む尼彦と申す者である。この先6年は豊作になるが、その後は諸国に疫病が流行るかもしれない。そうなった場合、自分の姿を絵にして部屋に貼っておけば疫病を逃れられる」と言い残し、尼彦は去っていった。

◇天日子尊(アマヒコノミコト)

新時代が幕開けた1875年(明治8年)、東京日日新聞の記事に天日子尊 のことが載っている。 越後湯沢で田んぼの中で人を呼ぶ者がいた。よく見ると人ではない。ダルマのように無毛で4本足異形の化け物だった。 誰も恐ろしくて近づかなかったが、ある通りがかりの男がこの妖怪に耳を傾けた。 「我は 天日子尊なり。今ここに現れたのは、この村はこれから7年の間凶作が続き、人口が日に日に減りやがて半分になる。 それを哀れに思いこれを告げに参った。我影像を写し書き、家ごとにこれを貼り、朝夕我を敬い尊みて祭るがよい。そうすれば7年の災難を免れるだろう。」 天日子尊は姿を消した。 天津神に仕えているとされる。

今ほど医療が進んでなかったため、現代人が想像するよりはるかに深刻に病は死に直結する。 そういった気持ちからも、アマビエのようなものは疫病や凶作、飢饉などを予言する妖怪というよりは神のような扱いを受け、それらを描いたものはお守りとして流行していた。

アマビエという音になったのは、アマビコ/アマヒコの『コ』が書き写されていく中で『エ』に間違えて転換していったものが定着したものではないかと言われている。

妖怪掛け軸『大蛇堂』

2020年2月、妖怪掛け軸専門店の『大蛇堂』が新型コロナウイルスの感染拡大に対しSNS上で、「妖怪の中に『流行り病がでたら対策のために私の姿を描いて人々にみせるように』と言ったのがいる」とアマビエを紹介し、「妖怪絵描きのみなさんには、今こそアマビエの絵をあげてほしいところです」と訴えたことで話題になった。  ネット上には次々と沈静化を祈願して『アマビエ』のイラストが投稿されている。

一刻も早く、終息することを祈ります。